課題オリエンテッドで組織の壁を超える!新興国“留職”プログラムで企業とNPOをつなぐ

2016.11.30

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NPO
インタビュー
課題オリエンテッドで組織の壁を超える!新興国“留職”プログラムで企業とNPOをつなぐ

企業とNPOがお互いの実現したいことや課題に基づいて協働し、相互補完し合う関係になる。とてもシンプルなことのようで、実際にそれを体現している例は少ないのではないでしょうか。新興国が抱える社会課題の解決を、“留職”プログラムというユニークなかたちで支援するNPO法人クロスフィールズは、まさにその好例です。今回は、留職事業の事業統括をする中山慎太郎さんにお話を伺いました。

 

NPO法人クロスフィールズ
「すべての人が、『働くこと』を通じて、想い・情熱を実現することのできる世界」、そして「企業・行政・NPOがパートナーとなり、次々と社会の課題を解決している世界」をビジョンに掲げ、活動しています。HPはこちら。

 

 

ビジネスの世界からNPOに集結した異才のチーム


 

クロスフィールズ中山慎太郎さん

西五反田のオフィスにお邪魔しました

 

− クロスフィールズはビジネスの世界から参加した人が多いのが特徴ですよね。まずは設立経緯について教えてください。

 

代表の小沼は青年海外協力隊出身。シリアでの活動中、現地NPOに派遣されていた経営コンサルタント達が、ビジネスの力を使って社会課題を次々と解決している姿を目の当たりにしました。その経験から、ビジネスの世界とソーシャルの世界をクロスさせることの可能性に気づいたことが、クロスフィールズの原点です。

共同代表の松島も、学生時代を通じてNPOの世界に身を投じて活動をする中で、同じくビジネスの力とNPOの力をもっと有機的につなげられる方法はないか模索していました。そんな二人が意気投合して、クロスフィールズが生まれました。

 

− 中山さんのこれまでの経歴についても教えてください。

 

大学卒業後、JBIC(国際協力銀行)、JICA(国際協力機構)で途上国のインフラ整備に、政府系援助機関の立場から携わりました。その中で、今度は民間企業側からも途上国のインフラ整備に携わりたいという思いが出てきて三菱商事に転職。中南米向けの水ビジネス事業などに携わったのち、2014年12月にクロスフィールズに参加しました。

 

− 実は代表の小沼さんとは部活も一緒、シェアハウスでも一緒だったという中山さん。そばで活動を見ていたクロスフィールズに、中山さん自身が参加したきっかけは?

 

大きなきっかけは、2011年の東日本大震災の後、仮設住宅の寺子屋で子供たちに勉強を教えるボランティアをした時の経験でした。大災害で家や家族を失い、その中でも勉強しなければならない子供達を目の前にして、それまでにないほどいてもたってもいられなくなる気持ちが湧き上がってきました。自分は一人の人間として、今のこの状況に対して本当に無力なのだと思い知り、ずーんと沈み込んでいました。

そんな時、たまたまスタッフの方から、寺子屋の子供たちに仕事の話をしてくださいと頼まれました。当時の私はペルーの仕事をしていたので、ペルーという国のこと、そこに住む人たちのこと、文化のこと、そこでの私の仕事のことを話しました。こんなこと話して、彼らはどんな風に思うんだろう?正直不安でした。そうしたら、子供たちの目がキラキラして、次々に「自分も行ってみたい!」「面白そう!」と言ってくれました。こういう状況の中でも、新しい世界に対するワクワク感や冒険心を子供は持っている、ということに純粋に驚きました。

この子達が「大人になるって楽しそう。早く大人になりたい」と思えるような、イキイキ生きている姿を自分が見せること、またそういう大人を増やすことをやりたいと思うようになりました。これが、自分の志の原点です。

 

− なるほど、それが中山さんの原点だったんですね。

 

もう一つきっかけがありまして、2014年5月に訪れたヨルダンで、シリア難民の方々と交流する機会があったことです。先がまったく見通せない状況の中、それでもそこで生きている人々の間には、悲しみの中にも時には笑顔があり、新しく生まれてくる命があり、日々の生活がありました。人は、どんな困難の中にあっても力強く生きることができる、その姿に大きな感銘を受けました。

この時湧き上がってきたのが「今までの自分は何を怖がっていたんだろう」という思いでした。日本という豊かな国に生まれ、どんなことでも挑戦することのできる恵まれた環境にいるのだから、自分の信じる道で全力で挑戦する生き方をしたい、という気持ちが強くなり、クロスフィールズの門を叩きました。

 

企業では得難い留職プログラムの経験が成長を加速する


 

ベトナムの子どもと一緒に

ベトナムの子どもと一緒に

 

− メイン事業である留職プログラムについて、教えてください。

 

留職プログラムとは、いわば「青年海外協力隊の民間企業版」とも呼べる取組みです。参加者(「留職」する人、ということで、「留職者」と呼んでいます。)には、自社の本業で培った技術や経験を活かして新興国での課題解決に貢献してもらいます。

日本の企業からアジアの新興国に飛び込み、職場とは全く違う環境で、国籍や文化や生い立ちも全く違う現場の同僚と力を合わせて、社会課題の現場の最前線で仕事をする。文化や価値観の違い、仕事の進め方の違いに戸惑いながらも、全力で仕事をしている留職先団体の人たちにインスパイアされる。社会課題の根深さ・深刻さに直面しつつも、日々、新興国の持つあふれるばかりのエネルギーを日々感じながら数か月を過ごすことになります。

普段の仕事の中ではなかなか見えてきにくい「自分の仕事」と「社会」とのつながりを感じる中で、そこから、「自分はなぜ今の仕事をしたいと思ったのか」「働くことを通じてどんな世界を実現したいのか」ということに思いを馳せていく。そこから、いつしか普段の生活で忙しさに呑まれて忘れていた「自分の夢・志」を取り戻し、「自分」と「仕事」と「社会」がつながった状態で、日本の企業に戻っていく。

また、受け入れ先のNPO、企業にとっても、日本の企業でプロフェッショナルとして活躍しているエンジニア、研究者、ビジネスマンの力を借りることで、より一層活動が推進できる・・・こうしたWin-Winの状態を実現することが、留職プログラムを通じて我々が目指しているものです。

 

− こうしてお話を聞くだけで濃厚な体験であることが伝わってきますね。実際にこれまでどのくらいの人数が参加しているのですか?

 

クロスフィールズが創業してからこれまでの5年間で、約30社の企業様から、合計100人超の留職者の派遣を実現することが出来ました。

 

− 着実に実績が積み重なってきているんですね。中山さんは、この仕事のどんなところにやりがいを感じますか?

 

留職プログラムが留職者に対して提供できる価値を一言で言えば、「枠を超える」経験ではないかと思います。数か月という限られた期間とはいえ、企業の看板を外して社会課題の現場に飛び込み、そこで自分なりにできることを、自分の持てる力の引き出しを全て出して考えて実践することで、自ら学びをつかみとること。「学び」はつかみとるものであるゆえに、一人ひとりの学びは多種多様です。一般化できない、留職者一人一人、その人にしかできない輝きを放つ学びがあるんです。そのプロセスに伴走者として関われることは、私にとって本当に大きなやりがいです。

また、もう一点、私達は、留職プログラムを通じ「留職者に、必ず留職先に貢献して頂く」ということを最重要視しています。そこに徹底的にこだわるからこそ、留職者の成長も実現できると考えています。また、留職者自身が、自分の能力を最大限ストレッチして、全力で業務に取り組むからこそ、現地への貢献も最大化できます。現地への貢献と留職者の成長。この二つを二律背反ではなく、高い次元で実現させることにこだわりぬきます。簡単ではありませんが、そこにチャレンジすることに、大きなやりがいを感じています。

 

− 一方で、この仕事をやる上でジレンマを感じることはありますか?

 

上記とも関連しますが、現地への貢献と留職者の成長の二つを、高い次元でどう実現させていくか、というところは、ジレンマというか、いつもメンバー皆で頭を悩ませているところです。

例えば、現状は企業側にプログラムを導入して頂き、留職者が決まってから留職先を探す形でマッチングを進めています。そのため、留職先団体にとって必要な時に必要なスキルを持った人をタイムリーに送ることが難しいことも多く、「現地団体への貢献」が、プログラムごとの「点」レベルにとどまってしまいます。もっともっと留職プログラムを導入頂く企業の数が増えて、常に送ることのできる人材をプールできるような状態を作っていく必要がありますね。

 

「ゴールの共有」と「意義の見える化」が企業との協働のカギ


 

クロスフィールズのロゴの前で

帆船をモチーフにしたロゴが目を引きます

 

− 企業と協働する上で留意していることはありますか?

 

まずは導入して下さる企業側の立場に立って、なぜ「なぜプログラムを導入して頂いたのか」「プログラムを通じてどのようなことを実現したいのか」というところを、背景にある思いの部分も含め、しっかりと理解することが一番大切だと思います。その上で、我々クロスフィールズが、なぜこういった事業を展開しているのか、その背景にはどんな思いがあるのか、という部分もしっかりとお伝えすることも大切だと思っています。

時には、人事のご担当者を留職者の方が活動されている現地にお連れして、留職プログラムの現場を肌感覚で体感して頂くこともあります。実際に行って頂くと、留職者の方がどんな状況でどんな表情で働いているかも分かりますし、また、何より、我々のパートナーである留職先団体の方々が、真剣に目の前の社会課題の解決に対して取り組んでいる様子も体感して頂けます。実際に視察に行かれた人事担当者の方から、「社会課題に取り組むNPOや企業に対するイメージが180度変わりました」といった感想を頂いたこともあります。

 

− 企業との協働に際して、苦労することはどんなことですか?

 

やはり、プログラムの価値を言語化することの難しさがあります。導入を検討して下さる企業側にとっては、投資対効果が可視化しづらく、検討プロセスを進めにくい部分があるようです。事実、担当者の方からも「私自身はプログラムの価値や意義が理解できるのですが、それを社内で共有して展開していくことが難しくて・・」という声を頂くこともあります。

私たちも、プログラムの価値や効果、インパクトを可視化していくことが非常に重要だと考えており、昨今特に力を入れて取り組んでいます。今年でクロスフィールズは創業5周年を迎えましたが、それを記念して作成した5 Years Reportでは、特にこうした点を意識して作成しました。

クロスフィールズ2015年度事業報告書(5 YEARS REPORT )

 

“課題オリエンテッド”で組織の壁を越える


 

クロスフィールズのビジョン・ミッションの前で

ビジョン・ミッションが目に留まるところに

 

− クロスフィールズのビジョンの一つに、「企業・行政・NPOがパートナーとなり、次々と社会の課題を解決している世界」とあります。それに関連して、組織やセクターの枠を超えて協働するということについて、どうとらえていますか?

 

例えば何か危機的状況に陥った時、そこにいる様々なステークホルダーが、組織の枠を超えて連携・協力できているかどうかが、その状況を打開できるかどうかにおいて非常に重要なカギだと思っています。組織の枠を超えて有機的に連携できているところとそうでないところで、実際の成果には大きな違いが生まれるということを、私自身の原体験として感じています。

組織の枠を超えた協働が実現するかどうかの鍵は、”課題オリエンテッド”で考えられるかどうか、にあるのではないかと思います。何よりもまず「この課題を何とかしたい」という想いでつながることができれば、協働もスムーズに行くけれど、「うちの組織としてはこうあるべき」という組織の論理が先に来てしまうと、連携や協働に対する難易度は高まり、成果にもつながりにくくなるのではないでしょうか。

 

− 組織やセクターの枠を超えられるかどうかの分岐点となるのは、何だと思いますか?

 

難しいですね。私自身も答えは見つけられていませんが、大切なことは、組織やセクターを構成しているのも結局は一人一人の人間なので、一人一人が、「何のために自分はここにいて、この仕事をしているのか。」という問いを常に持って、目の前で起こっている現実に目を向けることが第一歩なのではないかと思っています。そうなると、組織やセクターの論理よりも先に、この課題に対して自分が何ができるのか、という発想が生まれるのではないかと思っています。

 

− やはりここでも「何のためにこの仕事をしているのか」という問いが大事なんですね。少し広いところで、企業とNPOの協働の可能性について、その橋渡しをされていて感じることを教えてください。

 

最近「どこで働くか?」にこだわらない人が増えてきているな、と感じます。公共、民間、NPOなど様々な立場で働きながら、学び、気づきを深めていく循環が回っていくといいなと思います。「企業とNPO」という組み合わせでなければならないということではなく、私たちが望むような未来に向かっていくとすると、企業とNPOの協働は増えていくのが自然だし、その先にこそ未来の社会が見えてくるはず、と確信しています。

 

− 最後に、社会課題の解決に関心の高い、もしくは実際に携わっている読者の皆さんへ一言メッセージをお願いします。

 

クロスフィールズとして、まだまだやりたいことはたくさんあります。それを一つ一つ形にして行っているところです。これからもいろいろなアイデアや協働できる人と出会いたいので、興味を持った方はぜひお声がけくださると嬉しいです。

 

− どうも有難うございました。

(聞き手・ライター:後藤拓也、森田諒)

 

 

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参加企業様

2018年

株式会社エイジス 株式会社折勝商店 首都高速道路株式会社 株式会社東急不動産R&Dセンター 株式会社東急リゾートサービス
ハウス食品グループ本社株式会社 株式会社リジョブ

2017年

ワタミ株式会社 株式会社ディライトクリエイション 株式会社東急不動産次世代技術センター 株式会社エイチ・アイ・エス アデコ株式会社

2016年

日本たばこ産業株式会社 太陽ホールディングス 帝人フロンティア・旭化成アドバンス 東急不動産株式会社 エコッツエリア

協力

NPOサポートセンター 朝日新聞メディアラボ オルタナS 三井不動産株式会社

後援

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