CSRで“あさっての飯のタネ”を見つける!社員を巻き込む本気すぎる仕掛け

2016.12.21

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インタビュー
CSRで“あさっての飯のタネ”を見つける!社員を巻き込む本気すぎる仕掛け

企業のCSR(企業の社会的責任)活動と聞くと、どうしてもオフィス近隣の清掃や災害時の寄付など、いわゆるボランティアのイメージが強いのではないでしょうか。日立製作所ではそんな常識をくつがえして、本業を活かした震災復興支援や、ICT教育の推進などビジネスによるアプローチで社会課題解決に取り組んでいます。しかも、CSRは究極的には“あさっての飯のタネ”を探す活動であり、「経営と不可分」だとも言うのです。その真意を探りに行ってきました。

 

日立製作所 ICT事業統括本部 CSR部
従業員33万人、グループ会社1,000社を抱える日立グループ。グループ全体でのCSR活動に加えて、いくつかの事業部では独自に(!)CSR推進部署があります。今回お話をお聞きしたお二人は、情報通信部門におけるCSRをご担当されています。HPはこちら。

 

社会課題起点から発想して課題解決に挑む


 

写真右:株式会社日立製作所ICT事業統括本部コーポレートコミュニケーション本部 CSR部部長 兼 ブランド戦略部担当部長 増田典生様、写真左:同CSR部 江口亜由美様

写真右:株式会社日立製作所ICT事業統括本部コーポレートコミュニケーション本部 CSR部部長 兼 ブランド戦略部担当部長 増田典生様、写真左:同CSR部 江口亜由美様

 

−お二人はそれぞれ違うご経歴からCSRの世界に入られたとお聞きしています。どんな経緯があったか教えていただけますか?

 

江口さん:

私の社会人のキャリアは営業で始まりました。転職で日立グループに入ったのが、社会人4年目のとき、当時は役員秘書をしていました。在籍していた会社が合併し日立ソリューションズとなったタイミングで、CSRにキャリアチェンジしました。それが2010年10月のことです。そして2015年、現在の会社に転籍となりました。

2010年当時はCSRに関する知識もないため、勉強から始めました。その中で「社会課題起点」という言葉を知りました。社会課題起点で発想して課題解決に挑む、その考えでずっとCSRの活動を続けています。

 

増田さん:

2012年の4月から日立ソリューションズのCSR部長として、CSRの活動に関わることになりました。その後、2015年の4月に日立ソリューションズと日立製作所の大きな事業再編があり、CSRの仕事は全て日立製作所でやろうとなったことから、江口と同じように転籍することになりました。CSRの仕事に直接携わるようになる前には、経営企画、人事・総務などの仕事に関わってきていました。

 

企業が社会に対して的確に反応していく「Response ability」としてのCSR


 

−日立製作所におけるCSRの位置づけや目的を教えてください。

 

増田さん:

まず日立が大きく標ぼうしているのは、社会イノベーションです。OT(Operation Technology)とIT(Information Technology)を組み合わせて、イノベーションを通じて、世界を豊かにしたいと事業を展開しています。その上で、CSR施策全体の目的は、下記の日立グループのビジョンの実現です。

 

「社会のマクロトレンドをとらえ、サステナブルな社会を実現すべく社会課題にイノベーションで応え、チームワークとグローバルでの経験を活かし活気あふれる世界をめざす」

 

これこそが、社会的責任だと思います。そして、CSR部としては、CSRの「R」を「Responsibility(責任)」よりも、「Response ability(反応する能力)」だと捉えています。企業が社会に対して的確に反応していく、その力を持つことこそCSRの本質ではないかと考えています。一般的には我々は「BtoB(Business to Business)」企業だと言われますが、私たちは「BtoS(Business to Social)」の会社だと思っています。

 

CSRは“あさっての飯のタネ”をつくること


 

日立大森第二別館のオフィスにて

日立大森第二別館のオフィスにて

 

−CSRにあたって大切にされていることはなんですか?

 

増田さん:

「社会課題起点」と「協創」がキーワードです。「社会課題起点」の話についていえば、企業はよく、自社の商材をどのお客や市場に届けるかなど自社起点(自社のリソース起点)で事業を考えます。これはとても大切です。でも一方で、価値の最終提供先の社会からバックキャスティングして、社会課題を解決するためにあるべき姿を考えることもとても大切だと思っています。

 

これは足の長い取り組みで、すぐに収益は生みません。でも、とても大切なことだと思っています。新商品や新市場をつくることが「明日の飯のタネを探す」ことなら、社会課題起点で事業を考えていくことは「あさっての飯のタネを探す」ことではないでしょうか。

 

CSRは事業や経営と別物ではないと思います。その意味で、誤解を恐れずに言えば、当社の場合、寄付や町の清掃活動といったものは本質的なCSRではなく、本業の事業を通じていかに社会課題を解決していくことがCSRの本質だと思っています。

 

だからこそ、CSR活動ではどこかで事業にブリッジできないかなと常に意識しています。これは、社員の納得感や巻き込みにも有効です。事業部の皆さんにいつも伝えているのは、事業部の皆さんの次の事業の種を見つけるのをCSRという文脈でお手伝いしたい、ということです。そして、CSRという文脈だからこそつくれる機会がある、ということを意識しています。

 

異なるセクターが強みを持ちより同じ課題に向かう大切さ


釜石市での地域活性化支援活動にて。漁協の皆様との打合せ風景

釜石市での地域活性化支援活動にて。漁協の皆様との打合せ風景

 

−「協創」ということも大事にされていますよね。この言葉はお二人にとって、どんな意味を持っていますか?

 

増田さん:

協働は、とても大事だと思っています。社会課題に向き合い、社会課題起点からソリューションを考える際には、日立だけでできることには限界があります。例えば、釜石市での地域活性化支援活動。地域のコミュニティで何が起きていて、地域の人が何に困っているのかをきちんと把握するためにも、「釜援隊」という現地のNPOと連携、協業しています。彼らのノウハウなしには活動できないのです。

 

日立製作所で取り組むCSR活動には、我々だけではなく他のセクターや組織と一緒にやっているものが数多くあります。これからは、異なるセクターがお互いの強みを持ちより、同じ課題に向けて取り組んでいくことが大切だと実感しています。

 

−「協創」する上ではNPOと接点をつくったり、信頼関係を築いていくことも大切ですね。

 

増田さん:

中に籠っているだけではだめで、外に出ていくことが大切だと思います。私自身も一般社団法人企業間フューチャーセンターの理事を務めていたりしました。

 

江口さん:

NPOと協働していく中で、めざす方向性がより近いNPOを紹介してもらうことも多いです。私たちがやることも進化しますし、それを一緒にやってくださる方も常に変わっていきます。想いを持ってやっていると、同じ想いを持っている人との出会いにつながっていくという実感があります。

 

 

 

 

−CSR全体でみると、年間約1,000名もの社員の方が活動に参加されていると聞きます。具体的な活動例を教えていただけますか?

 

増田さん:

例えば、岩手県釜石市や宮城県女川町でICTを活かして実施している地域活性化支援活動があります。具体的には、漁協様のホームページをつくったり、水産加工業システムの改修、ブランド化の支援などです。この活動でも多様な関係者と強みを持ちより、一緒に活動しています。

 

江口さん:

今後の社会を支えていく次世代の支援をしたいと、教育支援活動にも力を入れています。ここでも企業や学校と協働しながら、企業が教育現場にどういう価値を提供できるかに取り組んでいます。具体的には、学校のニーズに応じてオリジナルな教材をつくり、出張授業を行っています。日立製作所の主要事業はICTですから、その強みを生かしタブレットを使った協働型の授業をやっています。また、生徒への授業実施はもちろん、学校の先生向けにもいかにICTを授業に活動できるかという授業も実施しています。

 

また、NPO法人クロスフィールズ*と一緒に「社会イノベーション事業体験ワークショップ」を実施しています。新興国の社会課題を解決する事業アイデアを考えるというものです。現地で事業を行う方ともインタラクティブに進める形で、人財育成にもつながっていると思います。

*NPO法人クロスフィールズについては、こちらの記事もあわせてお読みください。

(リンク:http://www.co-creaction.jp/whats_new/969.html)

 

NPO法人クロスフィールズによる、社会イノベーション事業体験ワークショップの様子

NPO法人クロスフィールズによる、社会イノベーション事業体験ワークショップの様子

 

増田さん:

実は、CSR活動の効果というのはケースによって異なると考えています。大きくは3つで、①人財育成の機会、②新規事業創出の機会、③ブランド価値向上の機会というように分けられると思います。その中で、クロスフィールズさんとご一緒にやっているものは、特に人財育成という観点が強いと思います。

 

江口さん:

これらに加えて、CSRセミナーをはじめとした意識醸成、理解浸透のためのセミナー・ワークショップなどを年に複数回実施していまして、昨年度だけで350名近い社員が参加しています。もちろんトップメッセージやイベントレポートなど、情報発信も積極的に行い、共感の輪を広げるきっかけとしています。こうして日頃からCSRについて考える機会をこつこつ積み重ねることが、大事だと思っています。

 

同じゴールを共有し、信頼関係を築く


企業プロボノ活動「ちょこプロ」にて、参加プロボノメンバーとNPO団体との打ち合わの様子

企業プロボノ活動「ちょこプロ」にて、参加プロボノメンバーとNPO団体との打ち合わの様子

 

−NPOとご一緒するときに大事にされていることはありますか?

 

増田さん:

一番大事にしているのは、伴走すること、つまり「共に走る」ということです。支援する側、される側の関係ではなく、共に同じ課題・同じゴールに向けて、目線を合わせて連携して進んでいくことではないでしょうか。もちろん言語や価値観の違いもありますが、社会を豊かにしていきたい、ということでは一緒だと思います。

 

江口さん:

その団体のビジョンに共感できることが大事だと感じています。私たちにない知見をもっている、その分野の専門家であるNPO団体と、同じゴールをめざして連携しています。

 

−コラボレーションする中で難しさを感じることはありますか?

 

増田さん:

幸いにも、大きな方向性としてそれほどずれるという経験はありません。ただし、成果物やアウトプットのイメージがずれることはあります。その際には、何が一番大切なのか、何を目指してやっているのかに立ち戻り、腹を割ってディスカッションをして認識を合わせるようにしています。そうした話ができる環境になるのは強固な信頼関係があるからで、そこが個人的には嬉しく思いますし、大切だと思います。

 

江口さん:

ある団体さんとご一緒した際に、想定と違うアウトプットが出てきたことがあります。その時、セクターの違う組織とのコミュニケーションでは、企業の常識をベースとしたアプローチが通用しないことを知りました。丁寧にコミュニケーションをとり、お互いを理解し、歩み寄ることで今はお互いストレスなく上手くコラボレーションできています。

 

CSRが未来の事業につながることを信じ、成果を積み上げていく


日立製作所のロゴの前で

日立製作所のロゴの前で

 

−CSR活動の効果や成果をどう社内に説明していますか?“あさっての飯のタネ”と言いつつも「成果はどうなってるの?」と聞かれることもありそうですよね。

 

増田さん:

実際に難しいと感じる場面も多いです。一つは、説明する相手の価値観に沿って、説明の仕方を変えることを意識しています。先にお話ししたように、CSRの効果には人財育成、ブランド価値の向上、事業創出の機会の創造という三つの観点があると思います。

 

人財育成やブランド価値の向上はわかりやすく、事業部長の方々とか、多くの人に納得してもらえます。ただ、事業創出の観点は「CSRが本当にあさっての飯のタネになっているんですか」と言われると、見えづらく分からない部分も多いです。ある意味では、信じるしかないと思います。

 

でも、ようやくその芽がでてきているものがあります。例えば、釜石市では震災後、電力復旧が大きな課題でした。そこで私たちがCSR活動でご支援していたこともご縁で、地産電力確保のマスタープラン作成に向けた実証実験が始まり、事業ベースで日立も参画しています。これは釜石市での4年のCSR活動を通じて、同じ方向をみながら利害抜きの信頼関係を築いてきたことが大きいと思います。そうした事例、結果を積み上げていきたいと思っています。

 

−CSRの活動なども通じてどんな社会が実現していることを望みますか?

 

増田さん:

個人的に思っているのは、共生社会です。「共に」のメンバーの中には、企業、地域コミュニティ、市民、NPO・NGO、行政、学術機関など様々なセクターがあり、共にいき、いかされている社会です。「いき・いかされる」には、「生きる・生かされる」という意味も、「活きる・活かされる」という意味も含んでいます。そして企業目線でいうと、そこに日立が必ずいるといいですね。

 

江口さん:

抽象的ですが、子どもも大人もイキイキしている社会が望ましいと思います。例えば、教育の出張授業をしていると、子どもがイキイキと学ぶだけではなく、それをみている大人もエネルギーをもらえます。CSRの取り組みを通して、相互にエネルギーを与えあいながら、社会全体が活気づいていったらいいと思っています。

 

−この記事をみてくださった方へのメッセージはありますか?

 

活動を通じて、ソーシャルグッドな世界をつくっていこうという志や想いを持っていらっしゃるNPOや企業はたくさんあると実感しています。そうした同じ想いをもつ同志の輪を広げていきたいと思っています。たくさんの企業の方、NPOの方、学生の方と出会うことができればと思っています。

 

貴重なお話、どうも有難うございました。

 

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参加企業様

2018年

株式会社エイジス 株式会社折勝商店 首都高速道路株式会社 株式会社東急不動産R&Dセンター 株式会社東急リゾートサービス
ハウス食品グループ本社株式会社 株式会社リジョブ

2017年

ワタミ株式会社 株式会社ディライトクリエイション 株式会社東急不動産次世代技術センター 株式会社エイチ・アイ・エス アデコ株式会社

2016年

日本たばこ産業株式会社 太陽ホールディングス 帝人フロンティア・旭化成アドバンス 東急不動産株式会社 エコッツエリア

協力

NPOサポートセンター 朝日新聞メディアラボ オルタナS 三井不動産株式会社

後援

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